約 1,077,050 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1791.html
「…何も問題はありません。健康そのものです」 「本当か?本当なのか!?」 カトレアを診断した主治医に、ヴァリエール公が詰め寄る。 「はい…薬を使った形跡すら感じられません」 力なく首を振る主治医の姿に、がっくりと肩を落とす公爵。 「あらあら、心配しなくても私はほら、こんな事も出来るようになりましたわ!」 グオン 「「座ったままの姿勢でジャンプを!?」」 育郎の治療を受けてすぐに、カトレアはルイズが止めるのも聞かずに、 その健康体がどれ程のものかを試しだした。 「ブラボー!おお、ブラボー!」と叫びながら突如浮き上がったり、 「かけよトロンベ!」と叫びながら自分の愛馬で屋敷中を走り回ったり、 その他諸々、その様はミス・アンチェインとでも呼びたくなるほどだった。 「何故…こうなってしまったのだ?」 「病が裏返ったとしか…」 「…なんだそれは?」 「今まで掛かっていた負荷がなくなり、急激に身体が活性化したのと合わさって」 「まあ…何はともあれ、カトレアの身体は治ったのです。 この際些細な事は気にしないでおきましょう」 溜息をつきつつ、二人の背後にいたヴァリエール公爵夫人がつげる。 「些細な事…か?」 ヴァリエール公の呟きを無視して、夫人はカトレアに向き直る。 「カトレア、貴方も元気になって嬉しいのはわかりますが、貴族たる者が そのようにはしゃぐなど…みっともないとは思わないのですか?」 カトレアは手を口に当て、あらあらと言いながら頭を下げる。 「ごめんなさいお母様。身体があんまりにも軽くなったものですから、 心まで軽くなったみたいで。不思議ですわね」 そう言ってケラケラと笑うカトレアに、つい再び溜息がでてしまう。 「あ…あの、お父様、ちいねえさまは?」 声のほうを見ると、部屋の外で待っているよう言われたルイズが、カトレアが 心配だったのだろう、堪えきれずに部屋に入ってきていた。 「こら、ルイズ!待ってなさいと言われたでしょう」 同じように廊下で待っていたエレオノールが、ルイズを連れ出そうとするが、 それをヴァリエール公が制する。 「かまわん、エレオノール。ルイズ、心配しなくとも異常は見当たらんそうだ」 「あれで…ですか?」 エレオノールが見ている方に視線を向けると、カトレアが部屋に追いてあった ワインをグラスに注いでいた。ただコルクぬきが見つからなかったのか、ビンの 底に指を刺して穴を開け、そこから注いでいる。 「カトレア!」 その時公爵夫人の凛とした声が部屋に響き、部屋にいる全員の身が硬くなった。 「…なんでしょう?」 部屋の中にいる人間全員が、緊張した面持ちでカトレアと公爵夫人を見る。 「…行儀が悪いですよ」 「それもそうですね」 「あー…なんだ、よくぞ我が娘カトレアを…その…治療してくれた。感謝する」 口ごもりながらも、ヴァリエール公が育郎に感謝の言葉をかける。 「は、はぁ…」 対する育郎は、どこかすまなさそうな顔をしている。 「ほら、もっと堂々としてなさいよ。治ったんだからいいんじゃない。 ルイズも、ほら。だいたいこういう事言うのは、貴女の役割でしょ?」 キュルケが育郎と、いろいろと疲れた表情をするルイズに声をかける。 「どう見ても病気には見えない」 「うん…まあ、そうなんだけどね」 タバサの言葉に頷くが、やはりどこか釈然としない表情をするルイズ。 「ああ、俺様も長い事生きてるけど、あれほどの「アンタは黙ってなさい!」 …わーったよ」 「その…ごめん」 「い、いいのよイクロー。あんたが謝らなくても」 「何をコソコソと話しているのかな!?」 「い、いえ。なんでもありませんわお父さま!」 焦る娘の様子に今日16度目になる溜息をつき、とにかく今回の事はこれで 良しとしよう。そう自分を無理やり納得させる。 「ルイズ、とにかく今日は友人といっしょにゆっくりとしていきなさい。 久しぶりに家族がそろったのだ。カトレア達も積もる話もある事だろう」 「えっとお父様…今日は日帰りのつもりだったので、休みの届けをだしては」 ルイズの言葉に笑いながら答える公爵。 「なに、一日授業を休むぐらいどうという事は…」 背後からの凄まじいプレッシャーに、言葉が止まるヴァリエール公。 「あなた…」 そのプレッシャーの発生源。己の妻の声に、ヴァリエール公の背筋が凍る。 「あるな!うむ!やはり無断で授業を休むなど言語道断!」 「あら…久しぶりにルイズと一緒に寝ようかと思ってましたのに」 娘の不満げな声に、溜息をつきながら公爵夫人が口を開く。 「…夕食ぐらいはとって行きなさい。エレオノール、カトレア、食事の準備が 整うまでルイズと一緒にいていやりなさい」 「わかりましたわ、お母様」 「は、はぁ…母様がそう言うなら。ほら、貴方達こっちにきなさい」 ルイズ達とともに、部屋を出ようとしたカトレアが、ふと何かに気付いた様子で ヴァリエール公の方に振り向く。 「そうですわ!」 「な、なんだカトレア?」 少し驚いた様子の公爵に、いつものような無邪気な笑顔でカトレアは告げた。 「お友達も学校があるからしかたないとして、あの使い魔さんだけでも 泊めていってはどうかしら?」 「は?」 「ルイズの話も聞きたいし、それに私を治してくれたお礼もしたいですし」 「お、お礼…ど、どういう意味だカトレア!?」 「そんなに凄かったの!?」 「ちょっと、なにやってんのよキュルケ!?」 突如現れたキュルケに続いて、ルイズと呆れた顔をしたエレオノールが 再び部屋に入ってくる。 「貴方達なにやってるのよ…お父様、どうかしたのですか?」 「あ、うむ。カトレアがそこの使い魔だけでも泊めてはどうかと言ってな。 まったくどういうつもりなのか…」 「へ?イクローを?なんで?」 「だって貴女が魔法学院でなにをしているか、使い魔さんに話を聞きたいし」 「凄かったのね…」 じゅるり 「キュルケ?」 再び溜息をついて、何か言ってやりなさいとエレオノールを見るヴァリエール公。 「……別に、かまわないでしょう」 「エレオノール、お前まで!?カリーヌ!」 最後の頼みと、妻に視線を向ける。 「カトレアを治したのは事実です。 平民とはいえ、それなりの待遇でもてなすべきでは?」 「わかった…ルイズ、お前もそれでいいかい?」 「あ、はい」 どうにも釈然としないといった表情のルイズだが、納得できないのは公爵自身 も同じである。カトレアはともかくとして、何故エレオノールまで? その時、公爵の頭にある考えが浮かんだ。 「まさか…いや、しかし…」 「どうかなされたのですか、あなた?」 「い、いや…なんでもない」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/756.html
「うわッ!なにコレ!メチャクチャ広いじゃない!」 「ここが『アルヴィーズの食堂』さ。みんなここで食事を取るんだ」 マリコルヌの後について歩きながらトリッシュは周りを見渡した。 絢爛豪華な装飾に眼を奪われつつ、マリコルヌから教師を含む貴族全員がこの場所で食事を取ると 説明される。トリッシュはこんな場所で食事を取ったことなど一度も無く、内心ドキドキしていた。 「さ!ここに座って」 「あ…うん」 マリコルヌが席を引きトリッシュを座らせると、その横の席にマリコルヌは座った。 他の貴族たちも続々と集まってきているが、トリッシュを見ると怪訝そうな顔をしてボソボソと 小さな声で周りの貴族と会話し、その内容がトリッシュにも聞こえていた。 「なんでメイドが座ってるんだ?」 「ほら、アレよ。昨日の儀式で……」 「平民なんだろ?…貴族と同じ席に座るなんて…」 正直居心地が良いとは言えない。そんなトリッシュの様子を見たマリコルヌが トリッシュの眼を見つめ紳士的に微笑みながら、 「他の奴らが言う事なんて気にしちゃダメだよ」 そう言ってトリッシュを慰める。マリコルヌはトリッシュの好みのタイプではけっして無いが 今まで自分の周りに居た男の中には無かった、その紳士的な態度にトリッシュは好感を覚えた。 「なんでメイドが…ああ、あなた確かマリコルヌの使い魔だったわね」 ふと隣の席を見るとドリルのようなロール髪の少女が座っていた。 「やあ!おはようモンモランシー!今日はギーシュと一緒じゃないのかい?」 モンモランシーと呼ばれた少女は不機嫌そうに口を尖らせマリコルヌを見ると、 「ギーシュは食事いらないって」 「へえ?ギーシュの奴どうしたんだろ?」 「昨日医務室にあなたの様子を見に行ってからずっと変なのよ。 今日だって呼びに行ったら『僕のそばに近寄るなああーーーッ』って言って出てこないのよ ねえマリコルヌ何か知らない?」 「う、うん僕にも判らないな。なんだか大変だね。ア、アハハ…」 二人の会話を聞いていたトリッシュは知らない振りを決め込むことにした。 「ところでどうして使い魔がここにいるのよ?外で待たせるんじゃないの?」 「え?ああ、ほら、使い魔と主人は一心同体って言うじゃないか」 やはり、自分がここに居ることは変らしい。トラブルはマズイと感じたトリッシュは モンモランシーに語りかけた。 「あなた…モンモランシーって言ったわよね?私、やっぱりここに居ちゃマズイかしら?」 「別に良いんじゃないの?あなたの主人が良いって言ってるんだから。 私の知ったことじゃないわ」 そう言って、モンモランシーは頬杖をしならが溜息を吐きだした。 おそらくは昨日胸を覗き込んでいた男のことで頭が一杯なのだろう。トリッシュの事などに 構ってられないと言った感じである。 (それにしても、あのキザ男には何にもしてないのにそんなに怯えるなんてね。 とんだ腰抜けだわ。マンモーニってヤツね。あのハゲ親父を少しは見習うべきだわ) 昨日、ギーシュを縛り上げて猿轡を噛ませ、持っていた毛抜きでやめてくれと叫ぶコルベールの 髪の毛を一本一本丁寧に抜いて額縁に飾っていった事を思い返しながら、トリッシュは 食事の開始を待つことにした。 豪華としか言いようの無い料理が運ばれトリッシュがたくさん並べられたフォークやナイフなどの 使い方や食事のマナー等をマリコルヌに聞いていると前の席に一人の少女が現れた。 桃色の髪の色をした小柄な少女である。その髪の色に父親を思い出し、トリッシュは 少し不快になった。 (うわ…アレで斑点つければあの男にそっくりだわ…朝から最悪ね…) 「ほら、椅子を引きなさいよ。気の利かない使い魔ね」 仕方ないといった感じで少女の後ろに控えた少年が椅子を引き、少女が腰掛ける。 (なんだか生意気そうな小娘ね。ムカつくわ。……今、使い魔って言ったわよね?) 『ソウデス。使イ魔とイイマシタネ』 スパイス・ガールがトリッシュの心を読んだように疑問に答える。 昨日の医務室でスパイス・ガールを発現してメイジにスタンドが見えないことは 確認済みである。もっとも見えているのなら召喚されたときに騒ぎになっている筈なのだが その時は意識はあったが眼が覚めておらず、スタンドの防衛本能でスパイス・ガールが勝手に 動いていたのでトリッシュの記憶には残っていなかった。 ちなみにその時の事をスパイス・ガールは怒られるのが怖かったので黙っていた。 「すげえ料理だな!俺こんなに食えないよ!」 (同感ね。おなかは空いてるけど朝からコレじゃ逆に食欲無くすわ) 目の前に座った少年に心の中で同意しながら料理を眺める。 この量と内容はトリッシュの基準から言ってとても朝食には思えなかった。 「あのね?ほんとは使い魔は外なの。アンタはわたしの特別な計らいで、床」 そう言って頬杖をつきながら桃色の髪の少女は少年に床に座るように命じる。 その様子を見ていたトリッシュに少女が気付き不機嫌そうな顔で話しかけてきた。 「ちょっとアンタ。なんでメイドが座ってんのよ、さっさと椅子からどきなさい」 桃色の髪と少女の態度にムカついたのでトリッシュは無視を決め込んだ。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2008.html
アルビオン王国の片隅にある、ウエストウッドの村 そこにある家の一つで、ルイズは眠れないまま寝返りを打っていた 考えるのは、先日再会した自分の使い魔のことである 自分を救うために、七万の軍勢に立ち向かった彼は、 死にかけていたのを……いや、一度死んだのを、この村に住む ハーフエルフの少女の力によって、救われたという その生存を絶望視されながらも、彼が死んだなどと、信じたくはなかったから、 ルイズは彼を探しにアルビオンへ出向いた 彼と初めて出会った日のことを思い出す 『使い魔』召喚の儀式で呼び出してしまったのは、 両手両足を拘束され、喉奥まで猿轡を飲み込んでいた平民 猿轡を解いた瞬間に、彼は「殺さないで」と叫んだ 彼はひたすら、幻影と幻聴に怯え、口からは 殺さないで、助けて、許して、という言葉だけが溢れてくる とりあえず、医務室へと運ばれた彼とマトモに会話が出来たのは翌日のことだった 一旦、落ち着いたらしい彼と会話をするが、 ありえないことばかり話す彼に、ルイズは自身が狂人を 召喚してしまったのだ、と激しく落ち込んだ 彼と、コルベールと三人で話し合って出た結論を思い出す 彼は、遠い場所で暗殺業をやっていた 彼は、素性を知られたくない雇用主の素性を探ったため 彼の友人が殺されていく所を目の前で見せ付けられた (この際に、狂ったのだろうとコルベールと結論づけた) 救ってもらった恩があるので、ルイズには従う こうして、彼は彼女の使い魔となったのだ 事実、彼は彼女によく仕えた 「死ぬところだったのを、お前に救われたのは事実だからな。 『恩には恩を、仇には仇を』……俺の、元の仲間の口癖だ」 懐かしそうに、悲しそうに言う彼にルイズは尋ねたことがある 「元の世界へ、帰りたい?」 彼は困ったような顔で、首を横に振った 「今更、どの面下げて帰ればいいんだ? 俺とあいつがやったことで、チームの奴らが、 どんなひどい目に遭ってるか、分からないのに」 彼は何処までも、仲間のことを思い遣っているのだと、 自分のことは、仲間の前では二の次なのだ、とルイズは思わざるを得なかった それでも、どんなに魔法に失敗しても自分を蔑まない彼を、 香水を巡るイザコザから、決闘騒ぎを起こした自分を守ってくれた彼を、 土くれのフーケ討伐任務で、自分を守ってくれた彼を、 自分を裏切った元婚約者のワルドから、自分を守ってくれた彼を、 七万の軍勢から、自分を守ってくれた彼を、 あらゆる敵から、自分を守る『盾』となってくれる彼を、 ルイズは大切な人だと、傍に居て欲しいと思わざるを得なかった 「……決めた」 ルイズは、ある決心を胸に、ベッドからそっと降りると、ある人物の部屋へ向かった コンコン、とドアをノックすると中から声が返る 「こんな夜中に、だぁれ?」 「私……ルイズ」 「え?!」 慌てたように扉を開いたのは、ハーフエルフの少女だった 流れるような金の髪、透き通るような白い肌、……大きすぎる胸 美しいなあ、と妙に場違いなことを一瞬考えて、ルイズは頭を振った 「ティファニア、だったかしら?……あなたに、お願いがあるの」 「え?あ、あの、私に?」 寝起きで頭がぼうっとしているらしい少女は、困惑している 「そう。あなたにしか、できないこと。杖を持って、付いてきて」 彼女の手を引いてやってきたのは、村の外れの方の家屋だった 中からは、うぅ、と苦しそうな呻きが漏れ聞こえてくる 「……あいつは、ここでもずっと、ああなのね?」 ルイズの問いに、テファは困ったような顔で頷いた 「ええ……。うなされてる理由を、どうしても教えてくれないんです。 迷惑になるから、ってこんな村外れの小さな小屋で眠って……」 その言葉に、ルイズも悲しそうな顔をしたあと、 小さくアンロックの呪文を唱え、扉を開ける コモンマジックすら使えなかった自分が、コレを使えるようになったとき、 彼が喜んでくれたことを思い出し、鼻の奥がツンとする 扉が開いた瞬間に、弾けるように飛び起きた彼を、ルイズは見つめる 「……まだ、眠れないのね?」 「ルイズと……テファ?どうしたんだ、こんな夜中に」 目の下に出来た隈は、彼が長いこと深く眠っていないのを如実に示す 「いつも、いつも、いつも、そう」 ルイズは、その場の全員に言い聞かせるように呟く 「あんたってば、いつも眠ることができなくて、うなされてる いつだって、こっちのことも考えずに、一人でうなされてる」 「……すまない。出来るだけ、声はあげないようにしてるんだが」 「そういう問題じゃないわ!!」 声を荒げるルイズの目には、涙が浮かんでいる 「迷惑なのよ、あんたが見る悪夢を、私も何度も見せられた! あんなものを見るのは、もうたくさん!!」 目の前で切り刻まれる彼の親友 輪切りにされた死体は額に入れられ 仲間達の下へと送り届けられていく 親友の死に気づいた仲間達は、彼ももう生きてはいまいと結論づけ、 『ボス』へと復讐を近い、その時を待つ だが、それを果たせないまま、仲間達はその数を減らしていく 体中を撃ち抜かれ、毒のようなもので体を溶かされ、 鉄の箱の乗った車輪に潰され、体をバラバラにされ、 蛇の毒に舌を灼かれ、鉄の彫刻で首を串刺しにされ、 ボスの顔をみることも、相打ちになることも許されず、殺されていった 彼は、毎夜毎夜、その夢を見ているのだと、気づいた うなされる彼の言葉を聞く限り、最初は親友の死だけだった しかし、気がつけば、呼ぶ名前は一人ずつ増えていた その度に、彼の苦しみは、増している 八人から増えなくなったところで、もう誰も居ないのだと悟った 「だから……だから、忘れなさいよ」 ぎゅ、と杖を持たない方の手でテファの腕を握り締める 「彼女の『虚無』で、忘れさせてもらいなさいよ!! あんたの、仲間達の死に様を!!忘れて、ゆっくり眠りなさいよ!!」 その言葉に、彼はハッとして、ルイズを見つめ、いつものように、悲しい笑顔を見せる 「心配してくれているんだな、ありがとう、ご主人様。 でも、俺は、忘れない。俺は、あいつらの死を背負って生きていく。 それが、たった一人、生き延びてしまった『罪』に対して、俺が背負うべき『罰』なんだ」 「……馬鹿……ッ!!あんたの仲間が、そんなこと、望むと思ってるの?! リゾットが、ギアッチョが、メローネがプロシュートがペッシが イルーゾォがホルマジオが……ソルベが!!」 ソルベ、という名を聞いた瞬間、彼の表情が変わる 「それは……」 彼は、目を伏せ、呼び出される直前のことを思い出す 目の前で切り刻まれる親友は、自分が鏡に吸い込まれる瞬間に『生きろ』と言ってくれた その願いを叶えてくれたからこそ、ルイズに仕えている 「それでも、……俺は、忘れない。忘れたくない 俺は、『罰』を負っていきなきゃならないんだ!」 死に様を忘れれば、彼らの死を、誇りを否定することに繋がるのではないかと、 彼は恐怖し、声を振り絞るようにして、叫んだ 「……馬鹿、もう、知らない……ッ!!」 「え、あ、あの、ルイズさん?!」 何が何だか分からないままのテファの手をひいて、 ルイズはその小屋を出て行った その後、やることもなく目を閉じた彼と、泣き疲れて眠ったルイズは、不思議な夢を見た 何処かの部屋で、ルイズと彼は、幾度もあの悪夢に出た仲間達と顔を合わせていた その中で、『リゾット』が、ポツリと告げた 「……お前には、俺達の死を乗り越えて欲しかった」 それに続いて、仲間達が次々と言葉を発していく 「だからこそ、俺達の死に様を見せた」 「けど、お前には、ちょいと重すぎたかもしれねえなあ」 「つーわけで、俺達はもう行くわ」 「そこのシニョリーナを泣かすんじゃねえぞ?」 「すいません、迷惑かけちまって……」 「そいつのこと、よろしく頼むぜ」 そう言いながら、一人ずつ扉の方へと向かう 彼の隣に座っていた親友が、ゆっくりとソファから立ち上がると 彼を挟んで反対側に座っていたルイズに、微笑む 「……お前みたいな優しい奴が、こいつの隣に居てくれて、よかった じゃあな、達者でやれよ?俺達全員の分まで、幸せに」 扉を開き、一人ずつ、光の中へ消えていくのを見送りながら、彼は叫んだ 「……お前達の死にうなされることがなくなっても、 俺は、絶対に忘れない、忘れないからな!!」 彼は、泣いていた。ルイズも、一緒に涙をこぼしながら、叫んだ。 「あなた達のこと、私も忘れない!こいつが生き残ったのが『罪』だというなら、 こいつが、忘れないことが『罰』だというなら、私も、忘れない!! だって……、使い魔とメイジは、一心同体だから……」 最後の一人が、彼の親友が消えていく段になって、彼女は殊更大声で叫んだ 「ジェラートは、私の使い魔だから……ッ!!」 安心したような微笑が、光の中に溶けていくのと同時に、二人の意識は、ゆっくりと覚醒していった 以降、悪夢にうなされることもなくなった彼は、今までより更に、その力を振るうようになった やがて、伝説の虚無のメイジ:ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの傍らには、 常に伝説の使い魔である『ガンダールヴ』:ジェラートが 寄り添っていたと、伝承には残ることとなった あらゆる武器を使いこなし、あらゆる敵から主を守った彼の背後に、 八人の男達の幻が有ったとも、伝えられている……
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/306.html
フーケが潜んでいるという場所に向かうべくロングビルが用意した馬車で移動している。 屋根無しの荷車のような馬車で、襲撃を受けた時の脱出を容易にする為だ。 ロングビルが御者を担っているが、手綱を握る彼女にキュルケが話しかける。 「ミス・ロングビル…手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」 「構いません。わたくしは、貴族の名を無くした者ですから」 「え?だって、あなたはオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」 「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だという事にあまりこだわらないお方です」 「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」 キュルケは興味津々といったようすでロングビルに迫るが、ルイズがそれを止めに入った。 「よしなさいよ、昔の事を根掘り葉ほひ…って何すんのよ!」 言おうとした事を誰かに止められる。手の主はプロシュートだ。 モノ凄い目でルイズを見ているが数秒後気付いたかのように手を離した。 「…一体なんだったのよ」 「…条件反射ってやつだ」 原因はもちろん矛盾点などがあれば辺り構わずキレまくり周りの物に八つ当たりをかますギアッチョだ。 特にこんな場所でキレられでもしたらえらい事になるため思わず体が反応した。 「土くれって言うからには土系統ってわけか…厄介だな」 頭に「?」を浮かべるルイズを尻目に話を進める。 「ええ、あの巨大なゴーレムを操れるからにはトライアングルクラスは確実よ」 それもあったが、一番厄介なのが土系統という事だ。 有機物なら老化させる事も可能だが無機物で構成されたゴーレムを作られるとグレイトフル・デッドではどうにもならない。 ワルキューレの場合は破壊もできたが昨日見た大きさのゴーレムを相手にするとなると正直厳しいものがある。 (メローネのベイビィ・フェイスと同じタイプって事か イルーゾォやメローネなら楽なんだろうがオレじゃあ本体狙いになるな) 「ところで、一つ聞きたいんだけど」 「何だ?」 「…まさかとは思うけど、わたし達を巻き込んで老化させるとか考えてないでしょうね?」 初日の惨状を見ていたルイズがそう問うが 「状況によるな」 その瞬間空間に「!」という文字が見えたような気がした。 「嫌よ!絶対嫌!」 「お願いだからそれはだけは…!」 タバサを除いてほぼ全員必死だ。 ロングビルに至っては半分脅えている感がある。 「…持ってろ」 「なによこれ」 「老化防止薬みてーなもんだ」 何か物が入った袋を4個渡されるが、袋はしっかり封が施されており中身は見れなかった。 「ちょっとそれ私にもよこしなさいよ」 「全員分ちゃんとある…ってどこに入れてるのよ!」 「そりゃあ、貴方には無理な場所よ」 まぁ、つまり胸に仕舞ったわけで『ゼロ』vs『微熱』第四ラウンドが開催されそうになるが 「馬車内」 タバサが冷静に突っ込みそれを終結させ、馬車が森に入り 「馬車でははここまでのようですね…ここから先は徒歩で行きましょう」 馬車を降り徒歩でしばらく進んだところに開けた場所がありそこに小屋らしき廃屋があった。 「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」 ロングビルがその小屋を指差すが人の気配は全く無い。 あの中に居ないとしても唯一の手掛かりであるからには調べないわけにはいかない。 タバサがちょこんと正座をし杖を使い地面に絵を書き作戦を提案する。 1.偵察圏囮が小屋に近付き小屋の様子を調べる 2.中にフーケが居れば挑発し誘き出す 3.フーケがゴーレムを作ろうとして外に出たところに魔法の一点集中砲火を浴びせこれを撃破する だがそう説明し終えるより先にプロシュートが小屋に近付いていた。 「ちょ…何やってんのよ!」 「フーケが居る居ないにしても…こうした方が早いからなッ!グレイトフル・デッドッ!!」 その瞬間、プロシュートを中心とした1~2メイルの植物がボロボロと音をたてて崩れ始めたッ! その様子を見て一瞬にしてプロシュートから離れる女性陣だったが 自分達が老化していない事を確認するとため息を吐きながら小屋に近付いてきた。 「危ない事するわね…無関係の人とか居たらどうするのよ」 「たいした事ァねーだろォーッ!破壊の杖が使われたら甚大な被害が出る…それよりは軽く済むッ!!」 少し時間が経ってから小屋に入る事にしたがロングビルだけは周辺の偵察に行くと言い残し森に消えていった。 ドアを蹴破るようにして中に入ったが、マタギの炭焼き小屋のようで人の隠れるような場所など無い。 あるのは崩れた暖炉とテーブル、その上に無造作に置かれているボロボロの服、酒瓶、薪、その横にある大きめの箱―チェストだけだ。 フーケの残した痕跡が無いか探っているところにタバサがチェストの中から何か物を取り出し 「破壊の杖」 と杖らしき物を無造作に取り出していた。 「随分とあっけないわね…!」 キュルケがそう叫ぶがプロシュートは違った。 (あのジジイの言った通り…か。確かにこれはオレの世界のもんだな) パンツァーファウスト ―― 第二次世界大戦においてドイツ軍が開発した歩兵が使う携帯用対戦車擲弾で確かに杖にみえない事も無い。 連合軍主力戦車をも撃破する事が可能で携帯用兵器としては大戦中最大級の威力を誇りまさにナチス脅威の科学力である。 破壊の杖を手にそれを見るが、何故か使い方までもが理解できてくる。 妙な感覚があった。 「それにしても破壊の杖だけで肝心のフーケが居ないなんて…」 その刹那、外からルイズの悲鳴が飛び込んできた。 「きゃぁああああああ!」 それを聞くとキュルケとタバサをスタンドと自分で引っつかみ外に飛び出す。 ドグシャァア 飛び出した瞬間小屋の上半分が吹っ飛ばされ、そこに居た者は…… 「ゴーレム…!」 それと同時にタバサとキュルケがそれぞれの魔法で攻撃を仕掛けるがゴーレムは依然として健在でびくともしていない。 「無理よ…こんなの!」 「戦略的撤退」 キュルケとタバサが敵わないとみて一目散に逃げ出す。 が、ルイズはそれに加わっていない。どこか ゴーレムの背後に立っていた。ルーンを呟き杖をゴーレムに向け振りかざす! 爆発は起こったがゴーレムの巨大な質量からすれば微々たるものだ。 表層を僅かに欠けさせただけで損傷には至らない。 爆発を受けたゴーレムがルイズに気付きその巨体をルイズに向けるべく振り向く。 「オメーじゃあ無理だ、逃げなッ!」 「嫌よ!フーケを捕まえれば、もう誰もわたしを『ゼロのルイズ』なんて呼ばなくなるんだから!」 そう答え返すルイズの目はマジだった。 「それにあんた言ったじゃない!『成長しろ!』って『成長しなけりゃあゼロと言われるだけだ!』って…!」 そう言い放ち杖を握り締める。 「あいつを倒さないと『成長』できないのよわたしは!」 ゴーレムが足を持ち上げルイズを踏み潰そうとした。 ルイズは魔法を使うべくルーンを呟き杖を振るが、結果はさっきと同じだ。 爆発が起こるがゴーレムはびくともしない僅かに土が欠けるもゴーレムはその歩みを止めようともしない。 ルイズの視界に巨大な足が広がり目をつぶった。 だが覚悟していたものは訪れない。目を開けるとゴーレムが足先を砕けさせていた。 「…デカイ事はデカイが堅さはねーな」 破壊力B、魔法で動かされているとはいえ土を破壊する事など造作も無い。 足先を弾け飛ばしたゴーレムだったが土が再び集まり何事も無かったかのように再生した。 「なるほど…土だけの事はあるな」 ルイズを引っつかみゴーレムから一旦離れる。 そして、距離を取ったところでプロシュートがルイズの両肩を掴んだ。 ―殴られる プロシュートがキュルケやギーシュにした事を思い出し思わず目を閉じた。 コツン だが、襲ってきたものは額への軽い衝撃 目を開けるとプロシュートが額を合わせており思わず赤くなって離そうとする 「ちょ…なに!?」 「ルイズ ルイズ ルイズ ルイズよォ~~ 成長したいんなら『状況を把握しろ』…おまえの魔法じゃあ、あのゴーレムを破壊するのは無理だ。そうだろ?」 うぐ…とルイズが言葉に詰まる。 「だが、オメーのその『覚悟』がありゃあ、あのゴーレムを倒せる。ここが正念場だぜルイズ!」 「倒せるの…?あのゴーレムを」 「こっちじゃあ破壊の杖って言うんだったな、こいつを使え。使い方は教える。オメーがやるんだ」 一瞬迷ったようにしたが、目をプロシュートに合わせ―― 「…分かったわ」 「ダーリンとルイズは?」 「分からない」 シルフィードに乗ったタバサとキュルケが二人を探していると… 「あのバカ!一人でなにやってるのよ!」 キュルケがゴーレムから破壊の杖を両手で押さえ逃げるようにして走っているルイズを見つけた。 「近寄れない…!」 それを助けるべくルイズに近寄るがゴーレムが拳を振り上げ近づけないでいた。 ゴーレムが止まる。だが同時にルイズも止まりゴーレムに向き直った。 「なにやってるの!今のうちに逃げなさい!」 「これでいいのよ…!ゴーレムが足を止めてる今がいいんじゃあない!」 ルイズが教えられたとおりにそれを構え狙いを付け…引き金を引いた。 「んきゃぁああ」 反動で後ろに2~3回転するが、弾頭が放物線を絵描きながらゴーレムに吸い込まれるかのように飛んでいく。 弾頭はゴーレムの上半身にめり込むように着弾し―――爆発した! 自分がいつも失敗して起こしている爆発とは比べ物にならないぐらいの音と閃光。 目を閉じ光が去るのを確認してからゆっくりと目を開けるとそこにはゴーレムの下半身がそこにあった。 さすがに上半身を完膚なきまでに破壊されたのでは再生もできないようで膝を付きそのまま土に還っていった。 「スゴイ…まさに破壊の杖ね…」 「やるじゃない…破壊の杖を使いこなすなんて」 「奇跡」 ゴーレムが破壊されたのを確認した二人が地上に降りてきた。 「ところでダーリンはどこ?」 「プロシュートならさっきの小屋の所よ。最後の仕上げがあるとか言ってたけど」 「それじゃあ早く迎えにいかないと」 だが小屋があった広場には誰も居なかった。 「…まさかフーケに?」 「そういえばミス・ロングビルもいないわ…」 三人にまさかという考えが浮かぶが茂みの中からロングビルが現れた。 「ミス・ロングビル、無事だったのね! フーケがどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」 キュルケがそう尋ねるがロングビルは顔を横に振った。 「破壊の杖はどうされたんですか?」 「ここよ」 そう、言うとルイズが抱き込むようにして抱えている破壊の杖を見せる。 「そう、それじゃあそれを渡してもらおうかしら」 その瞬間時が凍る。 「…どういう事ですか?」 「まだ分からない?さっきのゴーレムを操っていたのは私」 「え…じゃああなたが…土くれのフーケ!?」 「御名答、それにしてもさすが『破壊の杖』ね。私のゴーレムがバラバラじゃあない」 三人が戸惑いながらフーケに杖を向けるがそれよりも早くフーケが茂みの中から何かを引っ張りだしそれを盾にした。 (~~~~ッ!あのバカ!思いっきり無関係の人間巻き込んでるじゃないのよ!!) 弱りきった老人を盾にしたフーケが言い放つ。 「おっと。動かないで欲しいわね?この無力な平民を一緒に巻き込んでもいいっていうのなら話は別だけど」 杖こそ捨てはしないがさすがに人を盾にされてはどうしようもなくなっていた。 「どうして…!?」 「そうね…死ぬ前の手土産に教えてあげるわ この破壊の杖を奪ったのはいいんだけれど使い方が分からなかったのよ」 「使い方…?」 「ええ、振っても魔法をかけてもうんともすんともいわないんだから… そこで魔法学院の人間なら使い方を知ってると思ってここに連れてきたってわけ」 「わたし達の誰も知らなかったらどうするつもりだったの?」 「その時は全員ゴーレムで踏み潰して次の連中を連れてくるだけよ もっとも『ゼロ』って言われてた貴方が使い方を知ってるだなんて思ってもいなかったけど」 フーケが笑いながらそう言い放つ。 「話はここまでね。その杖を渡さないとこの可哀想な平民が死ぬ事になるわよ?」 三人が迷う、破壊の杖を渡せばどんな被害が出るか分からない。 だけど目の前の人間を見捨てるという事ができないのも事実。 迷いに迷い杖をフーケに向け投げようとした瞬間―― 「理由は…分かった」 その場に居る者以外の声がした。 「だ、誰!?」 フーケが辺りを見回すが誰も居ない。 この場で自分達以外の人間は自分が盾にしている今にも死に掛けている老人だけ――老人!? その瞬間老人がフーケの手を掴み ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 「だが、もう何もできないさ…ただしお前がだ……『フーケ』」 ズキュン! 「うぁああああああああああ!」 その瞬間森の中に土くれと呼ばれた盗賊の叫び声が響き渡った フーケ ― 直触りを受け老化 二つ名 土くれ ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/595.html
舞踏会に参加せず、そのまま眠りについたディアボロと共にドッピオも眠っていました 本当は夜遅くまでしていた舞踏会についていけず先にドッピオは眠ってしまっていたのですが 『・・・ドッピオ・・私の可愛いドッピオ』 何ですか?ボス 『私は・・・幸せになってはいけない』 なにを言ってるんですか、ボス。らしくないですよ? 『私は消え去ろう。ドッピオ、お前は残ってこの世界で幸せになれ』 待ってください!ボス!なんでそんなことを言うんですか!? そんな・・いなくならないでください!ボス! 幸せはボスがつかむべきです! ・・・ボス?なんで喋ってくれないんですか? ああ・・・きっと電話の調子が悪くなったんだ いつものように電話くださいよ・・・待ってます・・・電話 朝、ドッピオはまだ日が上がる前に起きました (・・・あれ?寝汗がすごい。変な夢みたのかな) とても怖い夢を見たような気がします ですが気にもしていられません。朝の仕事をこなそうと起き上がり洗濯をしようと洗い場に向かいます もはや言う必要もなくなるほど自然となった使い魔の仕事を終えていつもの通りの一日でした いつもと違うところといえばカードを使ったと言うことがマルトーたちに広まり ポーカーで大勝利したぐらいでしょうか(もちろんエピタフを使いました) 夜、ドッピオは一人でカードをいじっていました ルイズが寝る前は誘ったのですが勝ちすぎて逆にふてくされて眠ってしまいました コッ・・・コッ・・・ ・・・ドッピオの中でデジャブが起こりました。品評会前日、とても似たような足音を聞いています 「・・・ルイズさん、起きてください」 「なによ・・・もうカードなんかやらないわよ」 「違います。お客さんです」 「お客?こんなじかんに誰よ・・・」 ルイズは渋々着替えます コンコン・・ ノックされます。ドッピオはドアを開きます 案の定そこにいたのは女王アンリエッタでした 「ルイズ!あなたにしか頼めない重要な依頼があるの!」 ドッピオはすぐにカードに意識を向けました 「今から話す事は誰にも話してはいけません」 とアンリエッタが言いました。ドッピオは動かずカードをしています 「ちょっと気を利かせて席を外すとかないの?」 「メイジにとって使い魔は一心同体。席を外さなくても結構ですよ」 「あ・・・そうですか」 「・・・・・・」 ドッピオはまだカードに意識を向けています ルイズは不遜な態度を取っている使い魔を怒ろうとしますがアンリエッタの話のほうが大事と思い怒るのを止めました アンリエッタはゲルマニアの皇帝に嫁ぐ事となりました このことにルイズはとても驚きましたがドッピオはまだカードに意識を向けています 嫁ぐ理由はアルビオンの貴族が反乱を起こし、今にも王室が潰れそうな事 反乱軍が勝利すれば次はトリステインに侵攻してくるに違いないという事 それに対抗するにはゲルマニアと同盟を結ぶしかなく、同盟のために結婚せねばならないという事 そして女王としてはともかく、一人の女性としてアンリエッタはその結婚を望んではいないと言う事 直接、結婚は望んではいないとアンリエッタは言っていませんが 悲しそうなさみしそうな口調を聞けばそれは誰にでも解る事でした ドッピオはまだカードをいじっています。ルイズはいい加減頭にきました 「ドッピオ!姫殿下がこんな不遇な状況に立っているって言うのに何もないわけ!?」 「・・・それが王族としての義務というものじゃないんですか? それが上に立つ者として生まれた義務でしょう」 そう、アンリエッタの結婚と判断は王として正しいものです 王の義務として、国を国民を守るため身を売るのは正しい事 王として生まれた瞬間、王としての運命を受け入れなければならないのです アンリエッタは自分の結婚話という前置きを終えると、いよいよ本題を語り出します アルビオンの貴族はトリステインとゲルマニアの同盟を妨害するため、婚姻を妨げる材料を血眼になって探している そしてその材料は存在するのです。それはアンリエッタが以前したためた一通の手紙 その手紙の内容はさすがに言えないらしいのですが問題は、その手紙がアルビオンにあるという事 敵の手中に陥った訳ではなく、反乱勢と争う王家のウェールズ皇太子の手にあるのです 遅かれ早かれウェールズ皇太子は反乱勢に囚われてしまいます、そうしたら手紙も見つかります そうなったらトリステインは一国でアルビオンと対峙せねばならない だからその手紙を何としても取り戻して欲しい ――が、アンリエッタは本気でルイズに依頼をしに来た訳ではなかったのでした 「貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険な事、頼める訳がありませんわ・・・」 だがルイズは力強く王女の願いを聞き入れた。 「例え地獄の釜の中だろうが、竜のアギトの中だろうが、姫様の御為とあらば、何処なりと向かいますわ! このわたくしめに、その一件、是非ともお任せください」 「ああ・・・ありがとう。ルイズ」 「この杖と姫殿下から授かったシュヴァリエの爵位にかけて必ず成功させて見せましょう!」 「・・・それで話はまとまったようですね。なら今すぐに向かったほうがいいでしょう」 「少し待ってください」 アンリエッタがなぜか呼び止めました。そしてドッピオに左手を出します 「頼もしい使い魔、ドッピオさん。私の大事なお友達を、これからもよろしくお願いいたしますね」 これは、手の甲にキスしろというジェスチャーなのでしょう なるほど確かに王族らしい行為です。ですが 「・・・僕のような平民に手を許していいですか?」 はっきり言ってそんなことするつもりはありませんでした 自分に合わないこと、この上ありませんし何より (・・・ドアから見てるのがばれてないと思ってるんだろうなー) ドアから覗き見る目が羨ましい・・・もとい恨めしい目でした 「そうですよ姫様!使い魔にお手を許すなんて!」 「いいのですよ。忠誠には、報いるところがなければなりません」 「・・・僕が忠誠を誓っているのは主だけです 忠誠に報いると言うのならそこのドアの向こうにいる人にしてください」 「「な!?」」 「・・・フ、バレてしまっては仕方がない」 そんな感じで入ってきたのは 「ギーシュ!?なんであんたがここにいるのよ!」 「薔薇のように見目麗しい姫さまのあとをつけてきてみればこんな所へ それで鍵穴からまるで盗賊のように様子をうかがえば・・・ 姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」 「グラモン? あの、グラモン元帥の?」 「息子でございます。姫殿下」 ギーシュは深々と礼をし、アンリエッタの表情が明るいものに変わります 「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね ではお願いします。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」 「もちろんです!」 ウェールズ皇太子がアルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞かされ ルイズはアルビオンの地理に明るい事から出発の準備はほぼ整ったといえます そこでアンリエッタは、机に座ると羽根ペンで羊皮紙に手紙をしたため始めます そしてしばし自分の書いた文章を眺めた後、悲しそうな顔をして呟きました 「始祖ブリミルよ・・・この自分勝手な姫をお許しください でも、国を憂いても、わたくしはやはり、『この一文を書かざるえない』のです・・・ 自分の気持ちに、嘘をつく事はできないのです・・・」 アンリエッタは手紙を巻いて杖を振り、魔法で手紙を封ろうして花押を押しました 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください すぐ件の手紙を返してくれるでしょう」 それからアンリエッタは、右手の薬指から指輪を引き抜くとルイズに手渡した。 「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです お金が必要なら、売り払って旅の資金にあててください この任務にはトリステインの未来がかかっています 母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、あなた方を守りますように」 余談ですが結局ギーシュはアンリエッタにキスすることは出来ませんでした
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/357.html
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 「『直』は…素早いんだぜ」 崩れ落ちるようにして倒れるフーケとは対照的に老人が徐々に若くなっていく。 「え…あ…プ、プロシュートだったの…?全然気が付かなかった…!」 偽装するために廃屋にあった服に着替え髪の編みこみも解いているがその老人は紛れもなくプロシュートだった。 「まさか自分自身をも自由に老化させる事ができるなんて…」 キュルケなぞ半分放心した様子でそれを見ている。 「こいつ…やはり袋の中身見てやがったな」 プロシュートが倒れているフーケから馬車で渡された袋を取り出したのだが見事に封が破られていた。 「…なにこれ?何かのマジックアイテム?」 袋の中の石のようなものを見てルイズが聞いてきた。 「ああ、そいつはその辺に落ちてた石ころだ」 「………はい?あの時確かに『老化防止薬』って言ったわよね?確かに言ったわよね?」 「言ったな」 「小屋に入る前に『グレイトフル・デッド』っていうんだっけ?あれ使った時わたし達誰も老化しなかったじゃない」 「オレの周りだけ直に老化させたからな」 ああ、つまりこいつは―― 「使い魔が主人を騙したって思っていいのかしらね…!」 小刻みにルイズが震えておりこれは間違いなくキレかかっている。 「中身見られるの分かってて対抗策渡すマヌケが居ると思うか?」 「…なに?それじゃあ最初からミス・ロングビルがフーケって分かってたの?」 「完全な確証は無かったが、大体はな」 「どうして分かったのよ」 「窃盗ってのはどれだけ早く現場から遠くに逃げるってのが成否を分けるもんだ それをしないでたかだか馬で四時間程度で辿り着けるような小屋を潜伏先にするって事自体怪しいからな。オレなら夜通してでもしてでも遠くに逃げる」 プロシュートは暗殺チームだがパッショーネには窃盗チームも存在する。 そいつらの手口と今回のケースを比べてみれば『土くれのフーケ』と呼ばれる程のプロが単純な窃盗目的でこんな事をするはずが無かった。 「それに、こいつの目だ。オメーらや他の貴族達みたいな目をしてなかったからな。どちらかというと…オレ達に近い」 フーケもプロであり、それを貴族連中からなら隠し通す自信もあっただろうが、己と同類項ともいえる世界を生きてきたプロシュートには通用しない。 「確証が無かったからしばらく泳がせたが案の定って事だ」 「…わたしに破壊の杖を使わせてゴーレムを倒させたのは?」 「オレが倒したらこいつが出てこねーだろ。近付かれるとヤバイってのは知ってたみたいだしな」 プッツン 「こ、こここの犬ーーーーーッ!!そ、そそそれってわたしを囮にしたって事じゃない!!」 「成長できたって事でよしとするって事で、こらえろ」 「ご主人様を囮にする使い魔がどこの世界にいるのよ!こ、ここの生ハムーーーーーーーッ!!!!」 もう、今にも杖を取り出し爆破しそうな勢いだがギアッチョをなだめさせる時のように諭す。 「ゴーレムを倒したのはオメーにその『覚悟』があったからなんだぜ? その『覚悟』がなけりゃあゴーレムだって倒せてないし、フーケだってここに転がってねーんだからな」 まだ、納得できてないのかフーケを見たりプロシュートを見たりしている。 ゴーレムを自分の手で倒してそれがフーケ捕縛に直接繋がったという達成感と使い魔に囮にされたという思いが激しく戦っているようだった。 「ま…マンモーニから少し成長できたってこった」 「仲良さそうにしてるとこ悪いんだけど…これどうするの?」 そうキュルケが指差す方向にあるものははもちろんカラッカラに干からびたフーケだ。 「…任務は捕縛だからな、殺すわけにもいかねーし…杖ヘシ折って縄で縛っとけばいいだろ」 「あー…いや、それもあるんだけど……戻るの?これ」 「老化した後、戻すかどうかってのはオレの自由だな」 安堵したかのようにため息を吐くキュルケだが、別にフーケの事が心配なのではなく自分が万が一これに巻き込まれた場合の事を想定しての事だ。 そうこうしているうちにいつの間にかタバサが干からびたフーケを縛っていた。 スゥー というような音がして縛られたフーケが元の姿に戻り始める。当然気を失っているため起きはしない。 「戻しちゃってもいいの?」 「捕獲すりゃあ別に老化させる必要もねーからな。スタンドパワーも無駄に使う事になる」 「…スタンドパワーってなによ?」 「使い手の精神力みてーなもんだ」 「よく分からないけどダーリンの不思議な力の源、つまりわたし達が魔法を使う事と同じって事でいいのかしらね」 「まぁそんなとこだ」 言いながらフーケを担ぎ馬車に戻るが、軽くするためにもう一度老化させた事は言うまでもない。 学院長室でオスマンが事の顛末を聞いていた。 「ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな……美人だったもので何の疑いもせず秘書に採用してしまった」 早い話、居酒屋で飲んでるとこにフーケが給仕をしておりそれにセクハラをしても怒られなかったので秘書に採用したという事である。 コルベールが 「死ねばいいのに!」 と呟やいた気がするがプロシュートを除く三人は聞こえないふりをする事にした。 その後も続くオスマンの弁明だが曰く「あれがフーケの手だった」だの「尻を撫でても怒らないから惚れてる?」だの正直弁明どころか墓穴を掘っている。 ――がコルベールもそれに同調してるあたり同じ手に引っかかったらしい。 三人がホワイトアルバムよりも冷たい視線を送っている事に気付きオスマンが咳払いをして話の流れを変えようとする。 「さ、さてと、君たちはよくぞフーケを捕まえ、『破壊の杖』を取り返してくれた」 プロシュートを除いた三人が誇らしげに礼をした。 「フーケは、城の衛士に引き渡した…が何かしきりに鏡を見せてくれと言ってたようじゃが、『破壊の杖』は、無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」 オスマンがその手で三人の頭を撫で話を続ける。 「君達の『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろうな」 タバサはスデにシュヴァリエの称号を持っているらしく精錬勲章になるという事だが三人の顔が一斉に綻んだ。 だが、ルイズが興味なさそーに突っ立っているプロシュートに気付いた。 「……オールド・オスマン。プロシュートには何も無いんですか?」 「残念ながら、彼は貴族ではない…がこの前の決闘の処置が宮廷よりきてな」 「本当ですか?」 「うむ…処刑は免れたようじゃが流け…嘘!嘘じゃ!ジジイの愉快なジョーク…って痛い、痛いから」 『流け…』と聞いた瞬間放心したように杖を落としたが嘘と聞いて杖をオスマンに向け殴りつけた。 「…で、どうなったんですか?」 「う、うむ、何とかなりそうじゃの」 貴族が平民に決闘を仕掛け敗れたという点がグラモン家の『生命を惜しむな、名を惜しめ』という家風に反する事と そしてこれが一番の事だが、マルトー経由で 『二股かけそれが発覚。八つ当たりにメイドに魔法を使おうとし、それを止められ決闘になった』 これが決定打になった。 ただでさえ、貴族が平民に敗れて殺されたという事が平民の間で噂になっているというのに 平民のメイドに八つ当たりしようとして止められた事が噂として流れればグラモン家としては甚だ不名誉な事であり 最悪、他の国の貴族からの嘲笑の的になってしまう。 その恐れが『決闘の事は無かった事にしてください』という事にさせていた。 それを聞いたルイズが心底安心したようにため息を吐いた、ルイズなりに心配はしていたようだ。 「破壊の杖も戻ってきた事じゃし予定どおり『フリッグの舞踏会』を執り行う 今日の主役は君達じゃ。用意をしてきたまえ。着飾っておくようにな」 キュルケが顔を輝かせながら着替えるべく外にでていく。やはりこの手の行事は大好きなようだ。 「オレは爺さんに聞きたい事があるから先に行け」 「まだ、心は少年なんじゃがのぉ…」 「…身も心もさらに老化させてろうか?」 ルイズが心の中で(どこがだ!)と突っ込むが時に気にせず外に出る。 「さて…何を聞きたいのかね?」 「あの破壊の杖は確かにオレの世界のもんだ。パンツァーファウストっつーもんで魔法の杖とかじゃあねぇ」 「やはりドイツと言うのはお主の世界のものじゃったか」 「ああ、それと、パンツァーファウストを掴んだ時に その使い方までもが瞬時に理解できた。その時にオレの左手の文字みてーなのが光ったんだがこれが何か分かるか?」 左手に刻まれたルーンをオスマンに見せる。 「変わったルーンじゃの…コルベール君に調べさせておくからルーンを写させてくれんかの」 「そいつは構わねーが…この世界から元居た場所に戻れる方法はあるのか?」 「別の世界から召喚されたという事自体が無い事じゃからの…わしなりに調べてはみるが掴めんでも恨まんでくれ」 (まだ戻れそうにねーか…) リゾット達がボスの娘を奪取しボスを倒していれば問題は無いが自分が戻った時にチームが全滅などという事態になっていては洒落にもならない。 その焦りがプロシュートに珍しくため息を吐かせていた。 プロシュート兄貴―未だ帰還手段不明。 ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/900.html
トリステイン魔法学院。その頂点に立つ老人、オールド・オスマンは地図を見ながら悩んでいた。 「ここが良いかの?それともここか?」 何枚もの地図を机の上に広げ、オールド・オスマンは難しそうに頭を悩ましていた。 地図を見る表情は真剣そのもので、彼を知る者たちが見ればド肝を抜かすであろう光景である。 オスマンが悩んでいると学院長室の扉がノックされた。 「誰かの?」 「私です。オールド・オスマン」 扉の向こうから聞こえてくるのは、彼の秘書であるミス・ロングビルの声。 オスマンは入室を促し、一礼してミス・ロングビルは学院長室に入るとオスマンの元へ歩み寄る。 「心は決まったかの?」 オスマンが語りかけ、ミス・ロングビルは頬を朱に染め恥ずかしそうに頷く。 「大切に……して下さい」 「おお、おお、勿論じゃとも」 オスマンはミス・ロングビルに近づきその身体を抱き寄せる。ミス・ロングビルはオスマンに任せるままに 身体を預け、二人は愛しそうに抱き合う。 「おお、ミス・ロングビル。ハネムーンはどこがいいかの?」 ミス・ロングビルは潤んだ瞳でオスマンを見つめる。 「あなたと一緒ならどこでも構いませんわ。」 ミス・ロングビルはそう言って、オスマンの首に手を回し、顔を引き寄せる。 「それから……もう、ミス・ロングビルではありませんわ」 二人の唇が触れ合い――― オスマンは眼を覚ました。いつもと変わらぬ室内。使い魔のネズミと自分以外には誰も居ない。 「え~夢じゃった。正夢にならんかの~」 オスマンは欠伸をして一人呟く。その時、学院長室の扉がノックされた。 「誰じゃ?」 「私です。オールド・オスマン」 扉の向こうから聞こえてくるのは、彼の秘書であるミス・ロングビルの声。 夢で見たものと同じことが起きてオスマンは心を振るわせた。 「失礼します」 ミス・ロングビルが学院長室に入り会釈し、オスマンの元へ歩み寄る。 「とうとう結婚してくれる気になったか?!」 オスマンが机から身を乗り出し、ミス・ロングビルに期待を込めて問いかける。 ミス・ロングビルは太陽のように微笑み頷く。 「オールド・オスマン。寝言は寝てから言ってください。それともまだ寝てらっしゃるなら 起こして差し上げましょうか?二度と眼が覚めないかも知れませんが」 現実は非情だった。 「バッチリ目覚めておる!それでどうしたんじゃ?」 ミス・ロングビルは頷くと、少し焦りながら報告を始めた。 「中庭で、昨日二年生が召喚したばかりの使い魔が暴走して学園に被害を与えています。 現在、ミスタ・コルベール、ミスタ・ギトーにさっき戻ってきましたミセス・シュヴルーズが 対処しておりますが戦況芳しくなく、他の教師たちが『眠りの鐘』の使用許可を求めています」 「アホか。たかが暴走した使い魔を止めるのに秘宝なんぞ使えるか。それに戦況とは大げさな…… 教師たちに自分たちで何とかするよう伝えなさい」 オスマンがウンザリしたように答える。しかし、ミス・ロングビルは動かない。 「学院長。まず、ご自分の眼でご覧になって下さい」 ミス・ロングビルは毒舌だが、学院長である自分の命には逆らわない。一部の例外を除いてだが。 その彼女が真面目な顔で答えるのを見て、オスマンは杖を振るう。すると、学院長室の壁にかかった 大きな鏡に事件が起こっている中庭が映し出された。 「コッチヲ見ロォ~!」 キャタピラを唸らせ突進してくる使い魔にコルベールは炎を浴びせかける。 しかし使い魔が爆発し炎が吹き散らされ、その爆風でコルベールも吹き飛ばされた。 無傷のまま、その使い魔は倒れたコルベールに向かって尚も突進する。 「フギャーッ!!」 ミセス・シュヴルーズが作り出した赤土のゴーレムが、猫のような植物に近づく前に打ち砕かれ、 なんとか近づいたゴーレムも猫のような植物に触れられずに砕け散っていく。 そして、猫のような植物はミセス・シュヴルーズに狙いをつけた。 「おんぶして。ねっ!おんぶして」 ギトーの背中に取り付いた使い魔が囁きかける。ギトーはなんとか引き剥がそうとするも 無理に剥がそうとすると背中も剥がれた。使い魔は彼の耳元で囁きかける。 「人に『背中』見せれば……ねっ。ぼく離れてそっち行く!見せるだけ!」 「こりゃ凄いの」 中庭で起きている惨劇にも動じずにオスマンはのん気に顎鬚を摩る。 「早く『眠りの鐘』の使用許可を!」 ミス・ロングビルは苛立ち声を荒げる。しかし、オスマンは椅子に腰掛けミス・ロングビルに向き直り、 のんびりとした口調で言い聞かせるように語りかけた。 「まあの、これ位なら何とかするじゃろ。彼らに任せときなさい」 「……ですが!」 尚も食い下がるミス・ロングビルに鷹のように鋭い視線を浴びせ、それだけで黙らせる。 ミス・ロングビルは観念し、一礼して学院長室を後にした。 中庭で惨劇が繰り広げられる中、ルイズは自分の魔法を浴びて倒れたトリッシュを見下ろしていた。 左足が爆発に巻き込まれ苦痛の表情を浮かべて蹲るトリッシュに近づき、楽しげな顔で見下ろしながら 杖の先端をトリッシュに向けて突き出す。 「貴族が上で平民は下。これが正しいあり方なの」 トリッシュはルイズの言葉に反応せずに蹲ったまま震えている。ルイズは蹲り震えるトリッシュの頭を 足で踏む。勝ち誇った表情を隠そうともせず勝利者の愉悦に浸る。 「普通の決闘だと相手を殺さずに杖を折ったら勝ちなんだけど、アンタは平民だしね」 震えてなにも答えないトリッシュを見て、怯えていると感じたルイズは更に調子に乗る。 「そうね。アンタが『お許し下さいルイズ様。二度と逆らうようなことは致しません。どうかご慈悲を』って 言うなら命はとらないであげるわ。どう?私って優しいでしょ」 しかし、トリッシュは尚も震えて動かない。ルイズが答えないトリッシュに苛立ち顔を覗き込もうとする。 「ちょっとルイズ!やり過ぎなんじゃない?その子平民なんでしょ」 キュルケが見かねてルイズに声を掛けるが、ルイズはキュルケを睨む。邪魔するなと言うことだ。 両手を挙げて恭順の意を示すキュルケ。呆れて物も言えないようだ。 「アンタ!なんとか言ったらどうなの!!」 我慢できなくなったルイズが蹲るトリッシュの顔を見てやろうと、踏み付けていた足を上げる 足が離れた瞬間、トリッシュは顔を上げる。怯えていると思っていたトリッシュの顔が笑っていた。 「アンタなら絶対にやると思ったわ。近づく手間が省けたわね」 ルイズが驚き呪文を唱え杖を振る。だが、それよりも早く――― 「スパイス・ガール!」 杖を持つ手が弾かれ、その勢いでルイズは転倒する。怒りのままに杖を振ろうとして、弾かれた手に 眼が留まった。白魚のような細い指が五本とも歪に曲がり皮膚を破って白いものが飛び出している。 「なに…これ……?」 呆然とするルイズに脚を引きずりながら近づき、その顔にトリッシュは蹴りを叩き込む。 仰向けになって倒れたルイズの胸に踵を打ち込み、地面に釘付けにする。 まだ呆然としているルイズを見下ろすトリッシュ。一瞬にして立場が逆転していた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/30.html
この俺、ディアボロはGERの能力で永遠に死に続けることとなった 何百、いや何千死んだだろうか しかし、転機を俺は迎えた。 「ハッ?!今度は何だ?」 いつの間にか俺はまた見知らぬ所に飛ばされた 周りには黒いコートを着た集団がいる 「どこから・・・どこから襲ってくるんだ?!」 そうして戸惑っていると一人の桃色の髪をした少女が近づいてくる 「くくく来るな?!俺のそばに近寄るな!!!」 少女は訝(いぶか)しい表情をして俺に聞き取れない言語で怒鳴る 俺の目の前まで来てわけの分からない言語で言葉を発した後 「???!!!!」 俺に口付けをしてきたのだ (何か・・・いつもと違うようだぞ・・・?) 口付けをされながら俺は考えをまとめていた (GERの能力が解けたとは思えない・・・だが) いつもだったら死を迎えるのは二、三分だ だが今回はどうだ。時間は経っているが死を迎えない (まさかジョルノ自身に何かがあってGERの能力が・・・) 考えをまとめた結果は (・・・この世界には俺の救いがあるかもしれん!) 今までの自分とは思えないほどの楽観的な答えだった しばらくの間、周りは静寂としていた だが 「・・・プククッ」 その笑いから 「くくくっ」 「あっはっはっはっはっは」 「ぶーっはっはっはっはァ――――ッ」 「ちょ、ちょっと、ぷはっ、アハハハハハハハハ」 「くわははははは」 「さっすがルイズッ ぐはははは」 「平民を召喚したぞおおおお」 周りの笑いによって静寂は打ち破られた 「・・・くっ」 召喚をした張本人、ルイズは恥ずかしさで顔が真っ赤だった そして無意識にその怒りを使い魔である目の前の男にぶつけようとした 「お前!」 無作法に呼びかける。だが 「ククッハハハハックハハハハハハッ!!!」 目の前の男は突然笑い出した 「・・・ご主人様を侮辱するつもり?」 俺は嬉しさのあまり笑い出してしまった もしかするとこの先すぐに死んでしまうかもしれない だが終わりを終わらせる可能性が少しでも見えたのだ。笑わずにはいられまい 「・・・ご主人様を侮辱するつもり?」 だがその絶頂の心情を無粋にも汚すものがいた 「・・・ご主人様?」 「そうよ。貴方は私に召喚された使い魔、貴方はさっきの契約で私の使い魔になったの」 つまりこの少女によって俺は救われたのだろうか (この世界・・・スタンドとは違う力がある世界のようだな 我が野望の成就にはいつ、またチャンスがあるか分からん ならばここで我が野望を成し遂げる!) 「ちょっと聞いているの!」 主人を名乗る少女からの怒声が聞こえる (・・・今はこの者たちに合わせて世界について調べるべきか 我が野望の成就はまず世界を知らなければ) 「トゥルルルルルルルル!」 「なに?!」 それは俺自身が発した声だった 「・・主人、それを貸してくれないか?」 「え?」 それと言って指差したのはステッキだ 「・・・何に使うって言うのよ」 「なんでもいい。貸してくれないのなら」 キング・クリムゾンを出す・・・これは問題ないようだ キング・クリムゾンを使いステッキを奪う 「あ!ちょっと」 「・・・もしもし」 俺はステッキを耳と口にあててそう言った (ボス!聞こえますか!) 「・・・ドッピオ?まさかドッピオなのか?!」 (はい!・・・よく分かりませんがいつの間にかボスと意識が入れ替わっていたみたいです) ドッピオが生きている・・?あのとき死んでしまったと思ったドッピオが生きている? 「・・・よく生きていてくれたドッピオ。俺自身もこの状況についていけていない この世界について目の前にいる少女について行き、世界について調べてくれ ・・・私の可愛いドッピオ、やってくれるな?」 (はい!もちろんですボス!!) 意識が変わる。その寸前で (・・・前のときと同じくエピタフと腕を渡そう 私の可愛いドッピオ、生きていてくれてよかった) 「・・ボス・・ありがとうございます」 「・・いいかげん返してくれないかしら」 「あ、すいません」 (ドッピオ、この少女が私を・・私たちを救ってくれたようだ 利用以前に大切にしてやりたい。そう思うのだ) (・・・ボス?) (・・・忘れてくれ、ドッピオ。今のはただの戯言だ) ドッピオは少々驚いた あのボスが戯言とは言えどこんなことを言うとは思わなかったからだ (・・・僕たちを救ってくれた少女、ちゃんと礼儀を持たないといけないよな) そう決心したドッピオだった 2へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/40.html
現在、時間で言うなら午前三時くらいの夜 「・・・もうちょっと寝かせてくださいよ。今日は授業も用もないはずじゃ?」 「お・お・あ・り・よ!!」 またも夢の世界に戻ろうと床の上で毛布をまた被ろうとしたものの無常にも剥ぎ取られてしまいます 剥ぎ取った本人のピンクのブロンドがかった髪を寝ぼけ眼で見つめようやく覚醒したドッピオは 「我が偉大なる主人ルイズ様。このようなお時間に何用で御座いましょう?ふぁー」 そのまま起き上がって床に座りなおし用件が何か聞きます 何故か寝巻きでなく制服を着ているルイズは腰に手を当てながらも神妙に答えます 「土くれのフーケを倒しに行くわよ」 「土くれ?また決闘を引き受けたんですか?明日にしてくださいよ・・・」 毛布を取り返そうと腕を伸ばすが叩き落とされてしまいます 「フーケよフーケ!!今巷で話題の泥棒よ!!」 「何で僕たちが行くんですか?警察に行かせる事じゃないんですか?」 「・・・とりあえず後で話すわ。ついてきて」 そのまま部屋を出てしまったルイズの後を追います 途中小腹が空いたドッピオは少々食堂からパンと具材を拝借し簡易サンドイッチを作ります。数は七つほど 校門の近くまで歩くと馬車が一台現れます 「・・・ずいぶんと遅かったのですね」 さらにその中からミス・ロングビルが現れます。少なからず怒っているように思えます 「時間がないわ。行きましょう。」 ロングビルは頷き馬車は動き始める 空気の重さを感じるもドッピオはまずサンドイッチを二つほど食べるととルイズに「詳細を」と訴えかけます 「昨日、破壊の杖が盗まれたわ」 「・・・盗まれた?!」 話はこうでした 昨日の昼過ぎに1人の職員が宝物庫前の通路を歩いていると扉が何かで破壊されていたといいます それも魔法ではなく何か恐ろしく巨大な力によって破壊されていたらしく そして中には「破壊の杖頂きますbyフーケ」の文字が大きく壁に書かれていたのだといいます 「そ、そんなことが・・・ちょっと許せないですね・・・!」 (・・・さすがに元の世界に冠する手がかりだから気合が入ってるわね) 「・・・でもそれと僕たちとどういう関係が?」 「あんたが疑われたのよ」 魔法を超越している破壊力を持っているドッピオの不思議な力が疑われルイズが学園長から事情聴取されたと言う訳らしく 「まぁ、その後犯人の目撃者が現れて疑いは晴れたんだけどね」 「な、なんか僕危なかったみたいですね・・・」 「それでその後が問題なのよ・・・」 目撃者の話でフーケの隠れ家らしき場所がわかったのは良いのですが誰も破壊の杖奪還に行く気がないときたのです さらに盗まれたのは王都より保管を任されている品であり内密に取り返さないと何を言われるかわからないので 他所からの増援は見込めなく、内部で片付けるしかないのが現状なのです しかし相手は噂によると巨大なゴーレムを操り、土系統のエキスパートであるとかないとか いくら精鋭揃いの教師陣と言えど戦うのと教えるのは違うわけです 「も、もしかしてそれで「なら、戦うしかないじゃないか!!」とか言ったんじゃないですよね?」 「だ、誰かが行かなきゃ行けないでしょう!!」 「だからってそんな凶悪な魔法使い相手に生徒を向かわせる馬鹿がどこにいるんですか!!」 「あっち?」 既に見えなくなった学院を指差すルイズ 「・・・・・・」 頭が痛くなってきました。と同時に グギュルルルル・・・ 軽快なお腹の音がしました 「あ・・・」 「・・・・・」 音の主はルイズでした。夜食をとったドッピオと違いずっと何も食べてなかったからでしょうか ルイズの顔は真っ赤に染まりました。ついでにワナワナと震えています 「・・・・ッアンタの所為よ!!このバカッ!!!!」 ルイズ渾身の右ストレートが炸裂・・・しませんでした ドッピオは何か未来が不安になったのであらかじめエピタフを使っていましたので回避可能だったのです 「お、落ち着いてください!ルイズさん!」 差し出したのは作っておいたサンドイッチです。後五つほど余っていました 「・・・・っ」 恥ずかしさを紛らわせるかのようにサンドイッチを奪い食べようとしますが (・・・・ドッピオって料理が出来るのかしら?もしかして・・) さっき本人が食べていましたから食べれるものなんでしょう ですが用意しているのに三分かかっておらず適当に作ったものなんじゃないかとルイズは思い (・・・また恥を晒すよりましよ!) 意を決して食べますが 「・・・あら」 その意はすぐに間違いと気づきました 「どうですか?」 「ッ・・・ま、まあまあね」 実際に言うとこのサンドイッチはとても美味しかったのです それもそのはず、ドッピオはコック長マルトーから直伝に多い、速い、美味いの料理を多数習っていたのです このサンドイッチも直伝の内の一つです。パンが早く見つかったのでこれにしたのです 早々と一個食べ終わったルイズはすっかり落ち着いていました そんな中 「着きましたよ」 このロングビルの一言で馬車の空気は一変しました 「あそこがフーケの隠れ家と言われています」 「いかにも隠れ家って感じね」 ルイズもロングビルの横に並び観察し始めます 周りはその一軒以外には何もなく、半径5mくらい外側には木々が生い茂っています 「早速調べに行きましょう」 「まぁ待ってください」 横を通り抜けようとするルイズの肩を引き止めます 「なにするのよ」 「いきなり敵地に突貫するのは無謀だって言ってるんですよ」 「なら、どうするんです?私としては中を調べた方がいいと思うんですけど」 ドッピオは頭を捻り 「燃やすってのはどうですかね?」 「燃やしちゃうの?それだと回りに火が散ってしまうかもしれないわよ」 「・・・木とはそれなりに離れていますし回りに火が移るのは問題ないと思います」 「だったら破壊の杖は?杖だったら燃えちゃうじゃない」 「それも大丈夫です。破壊の杖が想像通りのものなら・・・」 ドッピオは以前オスマンから破壊の杖を聞いた後、形状や材質がどんなものかと聞いてみてその絵まで見せてもらいました 説明だけではあまり要領を得ませんでしたが絵を見てみるとどんな物か大体分かりました (たぶんあれはロケットランチャー、一回きりの破壊の杖・・・か) 「・・・それじゃ燃やしちゃおっか?」 「そうですね。さっさとやってしまいましょう」 「あ、あんまりオススメできないと思いますよ?破壊の杖もフーケもいなかったらどうするんですか?」 「それは目撃情報が間違ってたんですね。僕たちのせいじゃないし・・・火はどうやってつけましょうか?」 「だったら私に任せて!魔法ですぐに燃やせるわ」 「・・・今回は大丈夫なんですか?」 「大丈夫よ!錬金も何も無くただ燃やすだけって言うなら・・・」 そうしてルイズは集中しだします。ドッピオはオロオロしています ルイズは魔法を使おうとすると例外なく、いつも・・・ ドッガーーーン!! ・・・こうやって爆発するのですから 「嘘・・なんで?」 ルイズは火の玉でも出したかったんでしょうか でも結果は 「小屋が半分くらい吹っ飛んでるの?」 爆発の影響で火は結果的に回りました。爆発の影響も大きかったのでしょうか瞬時に広まりました 「・・・・ルイズさん」 「ま、まあ結果を見れば大丈夫じゃない!」 「・・・僕は破壊の杖は火に耐えられるって確かに言いましたよ」 「え、ええ」 「ですが爆発にまで耐えられる保障はありませんから」 「え?」 「・・・今の爆発でフーケが来るかもしれません。少し様子を見ましょう」 「何も起きないし来ないわねー」 「そうですねー」 構えていたものの何も起きず拍子抜けしているドッピオとルイズと裏腹にロングビルはわなわなと震えていました しばらくしても何も起きず若干お腹が空いたのでドッピオは座り込みサンドイッチを食べています ルイズも隣から手を伸ばし食べています ときおりいつ持ってきてたんだか分からないハムを取り出したドッピオはキング・クリムゾンの腕で火のところまで持っていき焼いて食べてたりしています そんなことをしているうちにドッピオはミス・ロングビルについて考え始めました 小屋を燃やすときに焦っていたりするのをみて考え付いたのが (この人もお腹が空いてるのかなー) などという変な結論でした。もちろんありえません 焦っていた理由はただ一つ。ロングビルの正体がフーケで目の前の敵二人の行動に焦っていたのです 燃やされてしまって破壊の杖は大丈夫なのだろうかと考えるフーケの思考は 「ロングビルさん」 敵のうちの一人、最重要警戒の人に話しかけられ一旦停止しました 「は、はいっ何でしょう」 「・・・食べます?」 そう言って差し出されたのはサンドイッチでした 「いえ、お気遣い無く」 「そんなこと言わずに。夜からずっとなにも食べてないでしょう?」 事実少々お腹が空いたのは事実でしたが敵からなにかを貰うのは自殺行為です まあ、向こうからしてみれば仲間のようなものなはずですが今のフーケにはそれが考えられませんでした 「・・・本当に大丈夫ですから。ですから」 貴方方で食べてください言おうとしたのにここで彼女のお腹は正直に クゥ・・・キュルル・・・ 音を鳴らしてしまいました。ちなみに人のお腹が減るとなるのは自律神経が関係しているといわれます 特に鳴らさないようにと思うと余計胃が緊張しなってしまうようになる・・・らしいです 「・・・やっぱり、お腹が減ってるんじゃないですか」 「・・・くっ」 ロングビルはこの敵たちのちょっと前のやり取りを思い出しました (・・・恥ずかしさを押さえ込むほどの味がおそらくこれにはある ・・・でもこんなところで敵の罠に引っかかるわけには・・・) 考え込んだ結果は 「・・・一つだけ頂きます」 食欲に負けてしまいました 奇妙な食事会(?)が終わるころには家につけた火も消えていました 「・・・結局フーケは現れずじまい・・・か」 「まあ、それはそれでよかったんじゃないですか? 戦わないならそれにこしたことはないですよ」 ドッピオはそう言い立ち上がりました 「少し焼け跡を調べてきますんで待っててください」 「え?じゃあ私も」 「大丈夫です。すぐに戻ってきますから」 そういいドッピオは焼け小屋に入っていきました 「・・・やっぱり中に人はいない」 適当に中を調べるドッピオでしたが一つ目にはいるものがありました 「・・・もしかしてこれ」 目の前のものは煤(すす)で汚れて真っ黒ですがこれは間違いなく 「・・・破壊の杖。ロケットランチャーみたいですね」 ドッピオは汚れを払いそれを拾いますが 「・・・これを放置したままどこかに?」 明らかに怪しいそれを手にしたときからドッピオはエピタフを発動させています そして・・・ 「ルイズさん!!」 未来に危機を感じ瞬時に主の下に戻るのでした フーケにまたとないチャンスが訪れました (ここでこの小娘をこちらで拉致すれば・・・) 使い魔であるドッピオも手が出せない。これをチャンスといわずになんと言う 「・・・・・・」 意識を集中させ、自分のゴーレムを目の前の小娘に気づかれずに作り上げていくフーケ ですが人間にある情だってもちろん彼女にもある。自分の状態に気づいて笑顔で食べ物を渡してくれた使い魔の男のことを考えると 少し、胸が痛んだ その痛みと同時に 「ルイズさん!!」 その男がいち早く異変を察知して戻ってきた 状況はすぐに分かった 「ドッピオ?何そんなに焦ってるのよ」 「後ろ!速く逃げて!」 ルイズとロングビルの後ろにゴーレムが見えている。破壊の杖を囮にした罠だったのだ 「後ろ?なっ?!」 後ろに振り返り見えたものは土で出来たゴーレムだった ゴーレムはそのままルイズを掴もうとして・・・その手は空をきった 「・・・え?」 キング・クリムゾンの腕を使った跳躍、跳躍というには速すぎる跳躍 瞬間移動のごとくルイズの目のまえに来て彼女を脇に抱えた 「ちょっと、もっとちゃんと持ちなさいよ!」 「無茶言わないでください!ロングビルさんも早く!」 ですがロングビルは動きません 「・・・ミス・ロングビル?」 驚嘆の声はルイズからでしょうか ゴーレムは間違いなく土くれのフーケのものでしょう ですがゴーレムはロングビルを攻撃せず、あまつさえその人を自らの手の上を乗せたのです 「まさか・・そんな」 「ミス・ロングビルが・・・」 「「土くれのフーケ・・・」」 10へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1334.html
遥かな国からの青年 ブチャラティは現在訳あってイタリア料理店にいる。 彼はイタリア人なのだから当然と言えば当然だが、彼が今いるのはイタリアではなく異世界なのだからそんな店あるはずない。 だが彼は今イタリア料理店にいる。彼と同じ世界の人間が賄う店に。 「まあ、座んな。ここであったのも何かの縁だ。」 長身の男が店に誘う。 「しっかしまさかまだこっちに呼ばれてた人間がいたとは驚いたぜ。ボインゴ!ちょっと水持ってこい。」 「わ、わかったよオインゴ兄ちゃん・・・。」 ボインゴと呼ばれた店員が奥に引っ込む。 「今日に限ってこんな奇跡が起きるとはねえ。あんたと…そっちの姉さんもなのか?」 オインゴがシルフィードを指差す。だが当の本人はボケた顔をしている。 「きゅい?」 「アンタいたのか…。なんでいつの間にかアンタまで店に入ってるんだ。」 シルフィードが頭をかきながら、 「えへへ…。つい空気に飲まれちゃったの。きゅい。」 「無関係なのかソイツ?」 「ついさっきそこで会ったんだ…。名前も知らない。アンタ誰だ?」 「シルフィードなの!」 「シルフィード!?“風の妖精”なんて名前なの?そんなの貴族が使い魔につけたり、偽名に使うな名前なのよ?」 あの女店長がシルフィードを見て驚いた。 「偽名か・・・・・・。」 ブチャラティがこっちに疑いの目を向けている。 (やばっ!またやっちゃったの!) シルフィードにタバサが背中をつねったような衝撃が走る。 「シルフィードか…。そういえばオレの知り合いに…そんな名前の風竜を使い魔にしてた奴がいたな…。」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。 「そこのところ、詳しく教えてもらえるか?」 (・・・という展開にうっかりしてしまうところだったの!危ない危ない。きゅい!) 途中からシルフィードの察知した未来の想像図だった。 ちなみにシルフィードと名乗ったあたりからがシルフィードの受信した電波である。 「どうしたんだ?」 「な、なんでもないの!わ、わたしはイルククゥ!ガリア王国からきたの!」 シルフィードは自分のもうひとつの名前、風韻竜仲間の中での名を名乗った。 (こ、こっちの名前ならお姉さまと風韻竜の仲間しか知らないからシルフィとわからないはず…。きゅいきゅい。) シルフィードには即席で偽名を名乗る機転を利かせる事はできなかった。 だがそれで冷や汗をかく事になる。 「イルククゥ?”そよ風”なんて名前なの?」 (しまった!こっちもダメだったの!?もう現実にしゃべちゃったの! どうする!?どうする!?) 「…変な名前。」 と言って店長は奥に引っ込むだけだった。 「そうか。ブローノ・ブチャラティだ。よろしくな。」 「よ・・よろしく!」 ブチャラティの表情からは不審そうなそぶりはさほど見られない。 (ウソをついてるようなそぶりはない・・。やはり少し変わってるだけの貴族なのか…?) 否、疑っていたが、その名前はシルフィードの本名なので見破ることができなかっただけだった。 「み、水です ハイ。」 ボインゴが水を渡す。 「ありがとう!きゅい!」 シルフィードもといイルククゥが水を取る。 「…で、さっそくだが質問を。アンタたちはどうやってこの世界に来たんだ?」 ブチャラティが切り出す。 (もしも…こいつらの出現の方法が向こうにいけそうな物であったとすれば・・。 帰れるかもしれない。元の世界に…!) ブチャラティは息を呑んだ。 「…それが、覚えてねーんだ。」 ブチャラティから一気に力が抜ける。 「え?」 「いや、だから、スマン!オレたちは覚えてないんだ・・。 オインゴが頭をかきながら言う。 「よくわからねえんだ・・。もう2年になる。ある日目が覚めたら突然オレたちはこの世界に来ててさ・・。 本当にわからねえ。思い出せねえんだ・・・。それどころか、その後この店長と会うまで俺たちはまず生きる事の心配をしなきゃいけなかったからそれどころじゃあなくってよ・・・。」 ブチャラティはオインゴたちのその様子がかなり情けなく見えた。 (ふりだしに戻ってしまった・・。) 「あなたは…どうなんですか? ハイ。」 ボインゴが聞いてきたので、ブチャラティは自分がルイズに召喚された件の話をする。 ちなみに自分が死んだあたりの話は伏せた。 「ハイ、これ。しばらく食ってないんでしょ?」 店長がスパゲッティを差し出す。 「これは…。いいのか?オレには金が・・。」 「いいのよいいのよ!せっかく久しぶりに会えた同じ世界から来た人間、仲間じゃないの!それに10年以上も一人で世界中旅してただけあって金のない奴の苦労がよくわかるのよ!遠慮はいらない!さあ食べな!」 ブチャラティは一瞬その気さくさに一瞬うなずきそうになったが踏みとどまる。 「いや、そんな事でいただくわけには…。」 グゥーーーーーーーーッ。 腹の音が鳴る。 その後照れながら頭をかいたのは 「・・・・・・・・・おいアンタ、えっとイルククゥだったか?騎士としての威厳とかは見せたりしないのか?」 「てへへ・・。きゅい。このイルククゥもスパゲッティをもらいますがかまいませんねっ!!」 ブチャラティが溜息をつく。そしてどうにも危なっかしくてほっとけない女だとブチャラティは思った。 「はぐ、むぐ、おいしいのー!きゅい!」 シルフィードもといイルククゥが子供のようにガツガツとブチャラティに分けてもらったスパゲッティを食べる。 「そりゃよかったな。ところで、お前貴族のようだが金あるんだよな?」 ドキン!! イルククゥが笑顔のまま固まっている。 「・・・・・・・・・・お金?」 「おい、お前・・・・まさか?」 しばらくイルククゥが(やべー、マジに緊急事態だわ。)とか考えているのが手に取るようにわかったが・・・。 「・・・・・・あ、お金はあるの。ゴメン今のなし!」 トランクの中に金があるのを発見したようだ。だがこれはちょっと見逃せない。 そもそもさっきからおかしい。主に言動が貴族のそれじゃあない。 最初に見たときは地べたに膝で座ってたし、スパゲッティの食い方がマナーもクソもない。 というか完全に子供の食い方である。 そもそもコイツ一体何歳なんだ?というのがブチャラティの一番の疑問だった。 見かけは自分と同じくらいに見えるが、案外ルイズより下だったりするのかもしれない。 それに加え口調や行動のせいでさらに幼く見える。 とりあえず確信したのは、こいつは貴族でないと言うこと。 そのトランクや服は確実に貴族から盗んだものだと考えた。 だが盗品のわりにトランクを調べるまでずっと無一文だと思っていたようだ。つまり金目当てではない点が府に落ちないのが気に入らない。 とにかくブチャラティはここでビシッと「お前貴族じゃないだろ。」と言ってやるつもりだった。 だが現実はそうはならない。 「お前貴族じゃな「ところでさ!アンタちょっと聞きたいんだけどさ…。」 店長が横槍を入れた。現実は非常である。 だが衝撃がブチャラティを襲ったのは次の瞬間だった。 「アンタってさ、『スタンド使い』でしょ。」 「何ッ!?」 バァーーー―――z______ン!!! 「スタンド…使い。と言うことはあんたたちも!?」 だが店長は慌てて手を振る。 「あ、違うよ。あたしはスタンド使いじゃあないんだ。現に見たことあるのは何かと同化して実体化するタイプの奴だけだからね。ホントにスタンド使いなのはその二人。」 店長が二人を指したらボインゴが物陰にさらに隠れた。 「・・・・・・・・?」 「・・もう12年くらいになるかな。そう。その頃にあたしは旅を始めたんだったな・・。 その頃のあたしはまだ子供でね、親父たちと喧嘩になって家を飛び出したのがすべての始まりだったんだ。」 店長が遠い目になっていた。 「まずは夢の海外進出をしようと思ったんだけどそのころのあたしは無一文だったからさ、密航する事にしたんだ。…まさかその密航した船の中でスタンドの存在を知るとは思ってなかったんだけどね。 いやー、いろんなスタンド使いを見たよ。船そのものを操るオランウータンとか、肉を被って別の人間にばける能力とか、変形する暴走車のスタンドってのもあった。その後当時の連れに母国の香港に送り返されそうになったけど、なんとか巻いてむしろ逆方向に飛んでやったけどね。」 店長が一気にまくし立てた。ところでさっきから兄弟が目を話し中、意図的に目を逸らしているのが気になった。 「それでアンタも『スタンド』の存在を知ったと言うことか?」 「そゆこと。ちなみに3年前、アンタの母国でイタリア語やこの料理の作り方を教えてくれた恩人も確実にスタンド使いだったね。だって食べただけで体の異常が直るのよ?その過程とか見て、ああ、確実にスタンド使いだなと思ってた。」 「そうか・・。だが待ってくれ。仮定するならともかくいきなりスタンド使いと決定するのはどうかと思うぞ?ただの人間かもしれないじゃあないか。実際スタンド使いだが・・・。」 「それから先はオレたちが教えてやるよ。オレたちはスタンド使いだからさ。」 オインゴとボインゴが会話に加わる。そしてオインゴが顔を抑えながら言う。 「お前もスタンド使いの端くれなら知ってるだろ?『スタンド使いとスタンド使いは引かれあう』というルールを。」 『スタンド使いとスタンド使いは引かれあう』このルールはポルポから聞いて知っていた。 「ああ、そのルールは知っている。だがそれが何の関係がある?」 「あのな、こっから先すっげー重要だから聞き逃すんじゃねーぞ?実はおれ達なりにこの世界の歴史とか最近の奇妙な噂とかをすでに調べておいたんだ。そしたらな、おまえみたいにサモン・サーなんとかだか、おれ達みたいに目が覚めたら飛んでたかは知らねーがな、それまで表ざたになっていなかっただけで、実は俺たちの世界の住人らしき疑いのある奴の情報が結構な数耳にすることができたんだ。」 ブチャラティは胸の辺りに悪い予感が重くのしかかっているのに気が付いた。思わず体が前にのりだしている。 「このトリステインのタルブって言う地方に、翼のついた鉄製の舟がかなり昔に落ちたって話も聞いたし、この世界の文化と完全にかけ離れているような行動をした変わり者が『俺は別の世界から来た』って言ってたらしい奴もいるし、あと奇妙な魔法がらみの術を行う平民っていうのが各地で増えつつあるらしい。」 「術を使う平民…。ハッ!」 「そこで思い出してほしいのが『スタンド使いとスタンド使いは引かれあう』という絆の…『引力』の法則だ。もしこのルールが異世界にいっても適用され続けるとしたら?」 その声が急に自分の声になった。そして次の瞬間オインゴの顔が自分と完全に同じになっていた。 「オイ、あんた達は…あんた達は何を言おうとしている?まさか…。」 「なんらかの拍子にこの世界に呼ばれたスタンド使いがまたこのルールに乗っ取ってスタンド使いをこちらに引き寄せる。それを何度も何度もやっている内にやがてネズミ算の要領でこの世界が俺たちの世界から来たスタンド使いだらけになるという仮説に至ったというわけだ。」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。 「そして俺たちはそいつら全員がみんなして友好的だと言う甘い考えは抱かなかった。 だからもし何の前触れもなく突然おれ達の世界の人間に会ったら、それはもしかしたらスタンド使いかもしれないとあらかじめ店長に言っておいたのさ。」 「・・・・・・・・・・・・。」 ブチャラティは絶句している。その顔にはいやな汗がにじみ出る。 「それは・・・・やはり悪い知らせなんだろうな・・・オインゴさん。」 「だな。すでにアルビオンでは不穏な空気が漂いつつあるみたいだしな。」 「不穏な空気?」 「クーデターの・・・話ですか?オインゴ兄ちゃん。」 ボインゴが割り込んだ。 「クーデター?アルビオン?スマン、オレはこっちに来てそう間もないんだ。詳しく教えてほしい。」 「・・・白の国、アルビオン。今そこで大多数のアルビオンの貴族が王党に反旗を翻したという噂があちらこちらではびこっているんです。 ハイ。」 オインゴが変身を解除して言う。 「最もアルビオンは遠い。新鮮な情報もなかなか入ってきやしねーが、その反乱した貴族派の連中がその平民、つまりスタンド使いの疑いのある人間を数少ないが雇ったらしい。まあ・・・今の所わかっているのはそれだけだ。」 ブチャラティは考えた。もしそのスタンド使いを雇った貴族派が人々の犠牲も問わないような過激で非情な輩だったら。 例えば以前戦ったあのカビを操るスタンド使いのように、周囲を無差別に攻撃し、それによって何の罪もない人々が巻き込まれたら。 「だ、大丈夫ですか・・・・・・? ハイ」 ボインゴが心配そうに覗き込む。 「ん、ああ、大丈夫だ・・・。」 店長がオインゴを睨みつけながら言う。 「全くオインゴ!せっかくのお客さんをいやな気分にさせたりして! ゴメンなさい、うちの店員が・・・・。」 「いや、ここでの話はとても無視できない重大な問題だ・・・。ここで知っておいて良かった。」 ブチャラティが立ち上がる。 「グラッツェ。世話になった。また来るよ。」 店長が後ろから声をかける。 「ありがとうございました!なんか苦しい事があってもいつでも来てねッ!! ウチの店はあんたの味方だからさ!」 ブチャラティは手を振った。 店を出る時イルククゥは頭の上に?マークを浮かべていた。 (あの人達の話・・・。さっぱりわかんなかったの・・・。スタンドって先住魔法とどう違うの・・・?シルフィには全くわからなかったの・・・。) 人間よりはるかに長い時を生きていて、人並みの知能があるとはいえ、所詮幼竜の彼女には難しい話だった。 (とりあえずとても遠い所から来たのはわかったの・・・。) 「さて・・・すっかり忘れていたが、ルイズを探しに行かないといい加減やばいかも知れないな・・・。」 ブチャラティは一人取り残され怒りに震えるルイズの顔が頭に浮かんだ。 「ところでアンタは結局なんなんだ?」 ドキッ! イルククゥが再び焦りだす。 (わ、忘れてたの!どうしよう。本当の事をいうわけには行かないし…。) 本当の事を言えば真っ先に困ることになるのはタバサだ。 風韻竜である自分の話が公になれば、タバサも困る事になるに違いない。 (お姉さまの使い魔として一応困る事は避けたいの…。) だがブチャラティから発せられる威圧感は異常ッ!彼女は目をそらす! 「いや、やっぱり止めておく。」 「きゅい?」 疑いで鋭くなっていたブチャラティの表情ががいつしか緩んでいた。彼はふっきれたように優しく笑いを浮かべていた。 「たとえお前が何であろうとオレが横から口を出す問題じゃあないからな。お前もオレにとやかく言われるすじあいはないと思ってるだろう。」 イルククゥがポカンと口を開けている。 「な、何も聞いたりしない?」 「しないさ。」 「怒ったりしない?いじめない?」 「しない。」 ま、これからは気を付けな。と言って去ろうとした時だった。 ガッシャッーーーン!!! キャアアアアアア!!! 絹を切り裂くような叫び声!! 「きゅい!誰かが叫んでたわ!!」 「ただごとではなさそうだな・・・。」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。 一方ルイズ。 「ブチャラティーー!!どこ行ったのよ!!ブチャラティーー!!」 先程ブチャラティとはぐれたルイズ。一人でずっと彼を探し続けていた。 「も、もうダメ…。疲れた…。」 その場にへたれこむルイズ。箱入り娘の彼女に町中探し回る体力はなかった!! 「つ…使い魔のくせに私を置いてきぼりにして…何でわたしがこんな目に…。」 疲れきった顔で立ち上がる「どこかで休むわもう…。えっと財布…。」 だがポケットを探って気付いた!財布がないッ! 「えっ!?財布は!?何でないの!?…ハッ!」 ―――――――まさかお前の体内にジッパーで隠したとは思わないだろ…。 「そうだ…。ジッパー!」 ルイズはマントをめくり、窓を鏡にして背中を見る。確かにジッパーがブラウスの背中の所についていた。だがっ! 「あ、あれ?届かない?ちょっと!?何これ!?何で持ち手がこんなに小さいのよ!」 ブチャラティはジッパーを貼るとき、ジッパーの大きさも自在に設定出来る。だ が今回はジッパーの持ち手が小さく、ルイズの手の届かない所にあるのだ。 「もう!何よこのマヌケな状況!!財布を持ってるのに取り出せないなんて!!やっぱアイツ後でとっちめてやるわ!!」 疲れ果てたルイズ。だがその耳に駆け足の音が聞こえてくる。 タッタッタッタッタッタッタッ 「あ、あれはッ!!」 その二人は!誰もが愛すその二人の名はッ!! 全国の女性と『ギーシュさん』信者の味方!ギーシュ・ド・グラモン! 全国のモテない男と変態紳士の味方!マリコルヌ・ド・グランドプレ! その二人が…こっちに全力疾走してくる。というか明らかに何かから必死に逃げている! 「あ!アンタ達!ちょっとお願いがあるの!背中のジッパー下ろしてほしいの!!」 「「そんな言葉に惑わされるかぁーーーーーーーッ!!!」」 よくわからないが確実に錯乱している。 目が血走っていて直視すると身震いしてしまう。 「状況がぜんぜん見えないって言うかアンタ達何やってんの!?」 「「逃げてんだよォーーーーーーーー!!!!貧乳(ゼロ)のルイズーーーーーーーッ!!!」」 残念。それは私のNGワードだ。 「アンタたち・・・。言うに事欠いて貧乳と書いてゼロとはね…。ハハハ。言ってくれるわね・・。ハハハハ・・・。」 殺意ッ!!今ルイズが目から発しているものを何と呼べばいいかと聞かれたら『殺意』としか答えられないッ!! 「キザ男にフトッチョがっ!!この手で殺してやるッ!!」 だが杖を抜こうとした瞬間ッ!! 「『うわああああああああああああああああああ!!!!!」』 さらに一人男が後ろから全力疾走で駆けてくるッ!! カウボーイ風の男が一人…いや一人で間違いないはずだが、気のせいか今二人分の悲鳴が聞こえた。 「テルゥーーー!!!無敵の『エニグマ』でなんとかしてくれぇーーーーーーーッ!!」 『無理だぁーーー!!!!今やったら『エニグマ』が斬られてしまうぅーーーーッ!!』 「あの娘ごと閉じ込めろぉーーーーー!!!」 『”恐怖のサイン”が見つからないんだよぉーーー!!多分精神を操られてるせいだぁーーーーッ!! …てかあんたの『エンペラー』を使えばいいじゃないか!!』 「俺は女は殴らないし撃たねぇ主義なんだよぉーーーー!!任務どころじゃあねぇ!!まともにやったら俺たちじゃアイツには勝てねぇんだよ!だから逃げの一手だッ!!」 いや間違いないッ!!いま確かにその男は見えない何かと『会話』していたッ!! 「な、今確かに二人分の声が・・!!いやそれよりあの連中一体何から逃げてんのよ!?」 その方向を向くと、見慣れた二人が向かい合っている。 片方は赤髪、長身、褐色肌、あのうらやま、いや忌々しい巨乳ッ!!キュルケで間違いない。 もう一人は青髪、小柄、眼鏡に確実に私より小さそうな貧乳ッ!!こっちもタバサで間違いないだろう。 だが何事かと駆け寄ろうとした時だった。 「『フレイム・ボール』ッ!!」 「『ウィンディ・アイシクル』。」 ヂヂヂッ!! 二つの呪文がぶつかり合って相殺するッ!!その衝撃で遠くのルイズも吹っ飛びそうだッ!! 「な、何アレ・・・。なんであの二人が本気で戦ってんの・・?」 そして片方が聞きなれた声でもう片方にこう言った。 「フフフ…。今の攻撃、確かに覚えたぞッ!!」 ギーシュ&マリコルヌ 参戦 一方ブチャラティとイルククゥ。 その悲鳴の原因は男二人の喧嘩だった。 「こんな街中で喧嘩か?もっと裏通りとか人気のないところでやるもんじゃあないのか?」 目が血走ってツリ目気味な男がバンダナを目元まで深く被った男を殴りつける。 「うがぁぁ!!テメェよくもやりやがったなぁ!!」 「何の話だ!オレがおまえに何をしたって言うんだ!?」 ツリ目の男は支離滅裂に見える。バンダナの男のほうは冷静のようだ。 体に切り傷、後ろの窓が割れているという事は何かが割れた音はあのバンダナの男がブチャラティは近くで震えていた女性に話しかける。 泣きべそをかいてたらしく目元が赤い。そしてガラスで切ったような跡があるようで、どうやらバンダナの男が投げられた時に飛んできたガラスが少し当たったらしい。 「ヒドイの・・。大丈夫?」 イルククゥが駆け寄って身を案じる。 「一体なにがあったんだ?アイツら何を揉めているんだ?」 「何も…やってないの…。あの目の尖った男が突然怒ってきて…。バンダナの人がかばったら喧嘩になってたんです…。」 「そうか・・・。」 ブチャラティが二人に近づいた。 「お、おかっぱさん?何をするの・・?」 バンダナの男がブチャラティに注意する。 「お、おい!!何やっているッ!!その男は・・・。」 「あんだぁ?テメェは!!テメェも殺されてぇのかコラァ!!」 ツリ目の男がブチャラティに襲い掛かる。 ズッキャア!! 「ブゲッ!!」 ブチャラティが返り討ちにしたッ!! 流石はギャングあがりのブチャラティ!!スタンドを使わなくても腕っ節は強かったッ!! 「てめぇよくもやりやがっ・・!」 バキッ!ドカッ! 間髪いれずにブチャラティがぶん殴るッ!! その場にいた人間は呆然とした。 「テ、テメェ・・・。よくもやりやがったなぁ・・。」 懐からナイフを取り出す。 「どてっ腹に突き刺してやら・・。」 ガシッ!! その行動より早くブチャラティがナイフを持った手を掴み、もう片方の手で・・・。 ズシィッ!! 相手のほうのどてっ腹に拳をねじり込んだッ!! 「ぐええええッ!!」 チンピラはそのまま気を失った。 (この『症状』…。まさか?) ブチャラティが気を失ったチンピラを見ている間、イルククゥがバンダナの男に駆け寄る。 「だ、大丈夫なの?」 「ああ・・・どうやら無事みてーだぜ。」 ブチャラティが倒れた男に近づく。 「おかっぱさん、危ないの…。」 「黙ってろ!!」 注意を促したあと、彼は男の腕を見る。 そこには何かの跡が多くあった。 「コイツ・・。やっぱり・・・!」 「『麻薬中毒者』だったようだな。」 バンダナの男が立ち上がる。 「クソッ!こんな傷をおわせるまで暴れやがって・・・!」 「あんた大丈夫か?その傷どうやらだいぶ切ったようだが・・・。」 「へっ!これくれーの傷ほっときゃあなおるっつーの!」 そう言って男がポケットからハンカチを出して口を拭く。 「よおアンタ、助かったぜ。巻き込んで悪かったな。 見ず知らずのアンタを巻き込んでしまって、マジ悪かったぜ。」 男が傷を抑えながら言う。 「…何者だ?」 「…何者ってオレに聞いたのかい?」 ブチャラティがバンダナの男を見る。 「いや、オレはただの観光客にすぎねーよぉ~~~? だから巻き込まれて迷惑してんだ・・・。」 「ほう、ただの観光客か。ならなんでおまえの汗は『ウソ』だといってるんだ?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・。 「…もしかしてバレていたりするのかな?」 「完璧に『平民』になりすましたつもりだったようだが、不自然さが拭いきれてないぞ? …どこから来た貴族だ?」 バンダナの男が「まいった」といわんばかりの顔をして立ち上がる。 「ハハ、見破られていたか。『平民』で間違いなさそうだけどただものじゃあないねキミ。」 「きゅい?」 男がバンダナをはずす。 その下から出てきたのは短く切った金髪と、傷だらけながらもどこか高貴な風格をかもしだしている 青年の顔だった。 ブチャラティ、きゅいきゅい 貴族の青年と出会う。 ルイズ キュルケとタバサの戦闘に巻き込まれる? ギーシュ、マリコルヌ、ホル・ホース 逃げるんだよォーーーーーーー!!! To Be Continued =>